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13/03/08 (金)

『ある日ある時』新天地 01

 横手に入った頃は、すっかり日が暮れてしまった。

 事前に連絡済みとは言え、心苦しかった。

 勤務時間はすでに過ぎていた。

 しかし、嫌な顔ひとつせず待っていてくれた。

 丁寧な応対を受けた。

 失礼とは思ったが、時間も時間である、挨拶もそこそこに、早々、用意してある避難者の場所を教えていただいた。

 恐らく、ここから、さらに車に揺られて・・・。

 「場所は、ホテルになります。歩いて5分程度です。」

 アッ、そうか、時間が時間だ、今夜はホテルで、明日改めて、山間部の廃校へ・・・。

 「部屋は、三部屋用意させていただきました。」

 エッ!?三部屋!?

 「今日は、ひとりなんですけど・・・」

 「いぇ、ホテルが避難所になってますから、昨年、暮れに出来たばかりの新築ですよ。」

 冗談でしょう?

 どうも、冗談ではないようだ。

 新築ホテルを避難所???

 「山間部の廃校の体育館か、使われていない公共施設だと思って来たんですが・・・、二次避難される方は、全員ですか?」

 「いぇ、どのくらい避難されてくるのか、わかりませんが、ホテルは、結果的に早い者勝ちの格好になります。」

 「ありがとうございました。行ってみます。」

 「お待ちしておりました。」

 「市の方に伺ってきたんですが、家族で一部屋、マットレスを貸していただければ、一部屋でいいんですが・・・」

 「市の方からは、ご家族分、三部屋で、お願いされていまして、三部屋ご用意させていただいております。」

 チョット、いくらなんでも。(‥;)

 どうも、一部屋になりそうもない「娘と母親、だけでも同じ部屋でお願いします。」

 多くの一次避難所の現状を思えば、廊下にマットレスでも、高級なんですが・・・。

 どうにか、二部屋にしていただいた。

 後日、気がついたのだが、全室満杯になる日は、多くなかった。

 恐らく、ホテルにしてみれば三部屋利用が、ありがたかったのかも知れない。

 宿泊は誰だろうと関係ない。

 お客は、国だったのだ。

 一次避難の現状を身をもって知ってる私たちとしては、三人で、二部屋でもあってはならない贅沢だった。

 三人で三部屋など、決して受け入れる訳にはいかなかった。

 スイッチを入れると電気が付いた!!

 なっ、なんと!?蛇口をひねると水が出た!!

 トイレが終われば水が流れた。

 何時までも止まらない!?

 壊れたのかと思った。

 ユニットバスがあってお湯が出た!!

 二十日間の非日常から、急激、日常にタイムスリップ戸惑うことばかりだった。

 暖房!?とんでもないことだ!!即、停止させて、眠りについた!!

 朝、目が覚めても、暖房のスイッチを入れる気にはならなかった。

新天地画像01  『これから、家族を迎へに行ってきます。』

 ホテルを一歩出ると驚いた!!
新天地画像02  そこかしこに雪の山!!(‥;)

 水路は、ゴォーゴォー!!恐らく、雪解けの水の勢いなのだろう!!

 見ているだけで怖くなってきた。
新天地画像03  水路の流れなどいい方で、軒下の雪を見た時は、それが、行く先、次々目に飛び込んでくると、段々、津波より恐怖を感じるようになった。

 なっ!?なんだ!?この雪は!!

 明日から、4月だよなぁ。。。

 段々、心配になってきた。。。

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