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『ある日ある時』震災 11
![]() あれだけの自然の驚異を体験した後だ、誰もが何かに対する畏敬の念でも抱いているかのように静かだった。かと思うと、テンション上がりっぱなしの集団も居た。 牧山幼稚園避難所に到着した。 探し始めてすぐに、幼稚園の職員らしき若い人が居たのだが、向けられた眼光は、この世の者とも思えないほどの眼の色だった。拒否、拒絶する色だった。声を掛けてくる様子もなかったし、無言のままだったし、地震を経験して、津波を経験して、昨夜から何も食べていない被災者には見えなかった。 |
![]() しかし、声を掛けさせる雰囲気ではない、自力で探すことにした。 教室を開けると、一種異様な視線だらけだったが、探し始めて、すぐに二人を見つけ出せた。ここには一時でも居られる雰囲気ではなかった、すぐさま家に連れ帰った。 「昨日、夜、何食べた?」 『なにも・・・』 「なにもって?何も食べなかったのか?」 『なにも食べてない・・・』 どういう事だ!?牧山幼稚園は、この地域の指定避難所のはず、非常食、飲料水、毛布、最低限の備蓄は経営母体である西明寺に、市からの物資が備蓄されてるはずだ。 |
![]() もしかして、尋ねたくなかった事だが、これまでも同じようなことが、度々あった。どんなに窮しても、人を掻き分けてでも、自分たちが物を得るようなことは絶対しなかった。 いや、できなかった。 「二人だけ食べなかったのか?」 『ウ、ウゥーーン、誰も!』 娘が抗議するように言った。 『他・の・人・も・何も・食べて・ない!!』 「暖房は?」 『全然!寒くて寝られなかった!誰も寝てないよ!』 |
![]() 仮に無かったとしても、寺院にある、日頃の食料で炊き出しぐらいは出来たはずだ。 済度を第一義にしなければならない寺院など、すでに存在しないようだ、死者を生業に儲けるだけが第一義に成り下がってしまった。そうさせたのは盲従する檀家なのかも知れない。 |
※ 2012.10.21 今思い出しても、ぞぉっ、とする眼光だった。 |
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